今回は、「事業プロセス(運用プロセス)」について紹介します。 |
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事業プロセス(運用プロセス) |
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ISO/FDIS9001:2015 5.1.1 c)項、及びISO/FDIS14001:2015 5.1 c)項で「組織の事業プロセスへのマネジメントシステム要求事項への統合を確実にする」という要求事項が追加になりました。また、ISO/FDIS9001:2015 4.4項では、品質マネジメントシステム及びそのプロセスにプロセスアプローチを採用し、実施し、かつ継続的に改善すること。及びプロセスの運用を支援するために必要な文書と記録の保持を要求しています。
前記2点を合わせると、事業プロセス(運用)のプロセスは、規格条項順ではなく、プロセス単位に、初めから終わりの仕事の流れ従って記載し、その中にISO9001 及びISO14001 の関連する要求事項を織り込んでいくことが望ましいでしょう。
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プロセスアプローチは、序文0.3に解説があります。 |
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序文 0.3.1 第3パラグラフ
プロセスアプローチは、組織の品質方針及び戦略的な方法性に従って意図した結果を達成するために、プロセス及びその相互作用を体系的に定義し、マネジメントすることに関わる。PDCAサイクルを、機会の利用及び望ましくない結果の防止を目指すリスクに基づく考え方に全体的な焦点を当てて用いることで、プロセス及びシステム全体をマネジメントすることができる。 |
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第4パラグラフに品質マネジメントシステムにプロセスアプローチを適用するポイントが記載されています。
a) 要求事項の理解及びその一貫した充足
解説)ISOP工業の事例で説明すると、図1-1及び図1-2の事業プロセス図において、顧客の要求事項(期待及びニーズ)を理解し、その要求事項を受注から製品の引き渡しまで一貫した流れの中で達成することができるプロセスの構成と順序を決定すること。
b) 付加価値の観点からの,プロセスの検討
解説)顧客価値及び事業の成功要因に関わる重要なプロセスはどのプロセスであるか。重要プロセスにおいて、差別化の観点から高い顧客価値が提供できるようにプロセスを創造すること。
c) 効果的なプロセスパフォーマンスの達成
解説)顧客価値の向上につながるプロセスパフォーマンス指標が設定されているか。その指標で達成度は判定できるか。
d) データ及び情報の評価に基づく、プロセスの改善
解説)プロセスの監視・測定が実施され、そのダータの分析からプロセスの改善がなされるようになっているか。
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上記のa) b)項はISOP工業を例に取ると、図1-1、図1-2事業のプロセス図において、顧客価値を提供する観点から、メリハリのついたプロセスの構成及び順序を決定することを指します。
c) d)項は、単一プロセスの運営に関するもので、ISO/FDIS9001 :2015 4.4項で「プロセス及びその順序、相互作用、パフォーマンス指標、インプット、アウトプット、資源、責任及び役割」を決定又は明確にして、リスク及び機会を考慮してプロセスを運用し評価し改善することを要求しています。
なお、ISO/FDIS9001 :2015 4.4項の条文の内容については、「第1回 競争優位のマネジメントシステムを構築する― 組織の目的」で記載しましたので、ここでは省略します。 |
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図表1は、ISO/DIS9001:2014及びISO/FDIS9001:2015の序文プロセスアプローチ、単一プロセスの説明図を合わせたものです。 |
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図表1 単一プロセスの要素の図示 |
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ここでの要点は以下の通りです。
① 単一プロセスの管理・改善とは、プロセスに適切なパフォーマンス指標を設定し、PDCAサイクルを回すことで達成できる。
② リスクベースの考え方とは、プロセスの計画において、顧客価値への影響度合いを考慮してプロセス及び活動を管理するために必要な厳密さ及び形式の程度を明確にすることである。
③プロセスの監視・測定のチェックポイント及び相互作用は、前工程、インプット、活動中、アウトプット、後工程の5ヶ所が考えられるが、その個所及び内容は該当するプロセス固有のものであり、リスクの程度によって決まる。
なお、相互作用とは、プロセスや活動のアウトプット←→インプットの接点における相互のコミュニケーションを指します。
事業プロセス(運用プロセス)の章は、これらの点を考慮して、プロセスアプローチの要素に従って記載します。 |
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支援プロセス |
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ISO9001規格のこの章の主な変更点は、1つ目は「資源」の対象が内部だけでなく外部の資源についても考慮することです。
2つ目は、資源の中に「組織の知識」という条項が追加になったこと。
3つ目は「コミュニケーション」について内部コミュニケーションのみならず外部コミュニケーションについても考慮することが求められています。
「コミュニケーション」については、ISO14001 でも「著しい環境側面について、外部コミュニケーションを行うかどうかを決定する」から「環境マネジメントに関連する情報について外部コミュニケーションを行わねばならない」に変更になっています。
4つ目は「文書管理」「記録の管理」統合されて「文書化した情報」となったことです。
5つ目は「力量及び認識」は「組織の管理下で業務を行う人」も対象になりました。
その他、細かい点では、「作業環境」が「プロセスの運用に関する環境」という表現に変更になりました。
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組織の知識 |
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組織の知識は、日本からの提案で、スタッフの離職や情報の取得や共有の失敗から製品及びサービスの不適合が発生することを防ぐことを目的に導入された要求条項です。具体的な事例は、ISO/FDIS9001:2015
7.1.6 注記2に紹介されている。
ISOP社の場合は、リスク及び機会への取組みで「創業者の技能がスムースに伝承されない場合、特殊な仕事について品質・納期・コストで顧客要求に答えられない可能性がある」というリスクを決定しており、その取組みを「組織の知識」としています。 |
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マーケチィング及び受注プロセス |
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このプロセスのISO/FDIS9001:2015の主要な関連条項は、「4.4 プロセス」「8.2 製品及びサービスに関連する要求事項の明確化」「8.5.3
顧客及び外部提供者の所有物」「9.1.2 顧客満足」です。
また、ISO/FDIS14001:2015では「8.1 d) 製品及びサービスの輸送又は提供者への著しい環境影響に関する情報を提供する必要性の考慮」
があります。
一方、ISO/FDIS9001:2015 8.2項、9.1.2 項の要求事項の内容はISO9001:2008年版と変りないが、8.5.3項は「顧客の所有物」から「顧客及び外部提供者の所有物」に変わっていることに注意を要するでしょう。
また、「外部提供者の所有物」とは、供給者、関連会社など認証範囲外から提供される所有物を指しています。 |
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設計開発プロセス |
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このプロセスのISO/FDIS9001:2015の主要な関連条項は、「8.3
製品及びサービスの設計開発」です。
ISO/FDIS9001:2015 8.3項の2008年版との変更点は、8.3.2 設計・開発へのインプットに「e) 製品及びサービスの性質に起因する失敗の起こりえる結果」が追加になったことで、その他の要求事項の変更はありません。
また、ISO/FDIS14001:2015では「8.1
a) 必要に応じて、ライフサイクルの各段階を考慮して、製品及びサービスの設計開発プロセスにおいて、環境上の要求事項が織り込まれていることを確実にするための管理の確立」があります。
統合マニュアル文例については、今回は管工事の「機器類の配置設計」の例を紹介します。
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生産計画及び購買プロセス |
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このプロセスのISO/FDIS9001:2015の主要な関連条項は、「4.4 プロセス」「8.4 外部から提供されるプロセス,製品及びサービスの管理」「8.5.1 製品及びサービス提供の管理」です。
ISO/FDIS9001:2015 8.4項の2008年版との変更点は、供給者が外部提供者(供給者、関連会社等の認証範囲外の提供者)に変わりました。
外部提供者の管理は、顧客に引き渡す製品及びサービスが組織の能力(顧客価値・成功要因のもととなる能力)に悪影響を及ぼさない様にしなければならなくなりました。
ここでは、製品及びサービスが、組織に代わって直接顧客に提供される場合やプロセスの一部がアウトソーシングされる場合は、外部提供者のパフォーマンスを監視し、その結果の記録を保持することが追加になっています。
また、ISO/FDIS14001:2015では「8.1 b) 必要に応じて、製品及びサービスの調達に関する環境上の要求事項を決定する」「8.1
c) 外部提供者に対して,関連する環境上の要求事項を伝達する」が当てはまります。
外部からの提供に対する管理は、プロセス,製品及びサービスの性質によって大きく変わります。先に外部部提供者に対するリスク及び機会を洗い出し、そこから管理の方式及び程度を決定するとよいでしょう。 |
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製造プロセス |
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このプロセスのISO/FDIS9001:2015の主要な関連条項は、「4.4 プロセス」「8.5 製品及びサービスの提供」である。2008年版の「プロセスの妥当性確認」は「8.5.1
製品及びサービスの提供の管理」に含められています。
「8.5.1 製品及びサービスの提供の管理」の中に「e) ヒューマンエラーを防止するための処置を実施する」が追加になりました。「人間は間違える動物」であるから、注意力を喚起するだけではヒューマンエラーは防げません。
そこで予防策としては、重要工程に対する工程のFMEAの実施、新設備導入時の設備FMEAの実施、工程設計時の心配事の洗い出しと対策等の方法がある。しかし、どの程度まで実施するかは発生が予測されるエラーのもつ影響の大きさによって決定すればよいでしょう。
簡単な方法しては、「ベテラン作業者による図面検討、疲労を起させないための勤務時間管理、適度な休息、5Sの実施、ダブルチェック」なども含まれるでしょう。
2008年版の「顧客の所有物」が「顧客及び外部提供者の所有物」となり対象物が広がっています。
「8.5.5 引き渡し後の活動」が追加になり、自ら実施する必要がある引き渡し後の活動の性質についてリスクを見極め、引き渡し後の活動の程度を決定することが追加になりました。特に、サービスの提供の場合、サービスとは組織と顧客とのインターフェースで実行されるものなので、この条項に注意を払う必要があります。
あと注目点として「8.5.6 変更の管理」が追加になりました。「6.3 変更の計画」と異なる点は、6.3項は品質マネジメントシステムの変更であり、8.5.6項は手順や規定で計画されていない製造プロセス中に起きる部材、工程、設備等の変更です。
変更にあたって責任者は、その計画の内容をレビューし管理する。また、大きな変更を伴う場合は。顧客に通知し顧客の合意を得てから実施する必要があるかも知れません。
ISO/FDIS14001:2015 5.1 c) 事業プロセスへの環境マネジメントシステムの要求事項の統合を確実にする」の要求事項に対応して、組織の重要な法規制等の順守項目及び著しい環境側面の管理に係る事項を製造及びサービス提供の手順の中に織り込んで行きます。
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リ ン ク |
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ISO9001/14001 2015年版移行コンサルのご案内 |
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(株)ISOP工業 統合(業務)マニュアル ダウンロード のページ |
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ISO9001:2015版移行内部監査員チェックリストサンプル |
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