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2010年02月 アーカイブ

2010年02月05日

サービス業における持続的な環境経営の進め方

 私はこれまでサービス業のエコアクション21の審査を数件担当させてもらっている。取組始めは節電、紙の使用量削減、水の使用量削減といった取組から入るが数年するとやることがなくなって段々と行き詰ってくる。一般的な進め方では、その次は環境商品・サービスの販売といった本業の環境への取り組みに重点を置くことになるが、中小企業の場合、建設コンサル業のように顧客が仕様を指示し自由裁量の余地が無い、運送業のように下請けのため自由裁量の余地が無い、といったケースが多く、よい手だてが見当たらない。
 製造業の場合は生産効率の向上が省エネ、廃棄物の低減となり、ある意味で永久的なテーマとなるが、サービス業ではこれに相当するものが無いだろうかと思っていたところ”メルマガEnviro-News”のイベント紹介で横浜市経済環境局が開催する省エネ経営支援セミナー「かたづけ・2S-エコなオフィスの作り方」という無料セミナーが目に飛びこんできた。
2S(5S)と省エネがどうして結びつくのだろうか?
開催日は2月5日午後で、丁度静岡で開催されるエコアクション21全国交流大会の前日なので参加申し込みをするとOKの返事がきた。5日の日は1日先に出発、横浜市の中小企業の皆さんと一緒にセミナーに参加させてもらいました。
 結論から言うと、書類で一杯になった事務所、例えば設計事務所のようなところでは5Sをうまく進めることにより事務作業の効率化ができ、更にスペースを削減することで省エネにもなる。販売業ではお客さに発行している定期刊行物に環境情報を織り込むことによりブランド力をアップすることができる。
また、これはどのような業種にも言えることだが社員の自主性を引き出し“やらされ感”を持たせないことが永続的な活動の秘訣となる。そのためには会社の理念の浸透と、“エコモチ”“エキャップ”のような仕組みを活用して社内で各人がエコに取組むことが社会貢献に目に見えるようにすることが有効であるということです。
以下はその内容です。

 会場は関内の横浜メディア・ビジネスセンター7階、当日の参加者は100名程度でした。
講演は
1.中小企業が環境で経営を伸ばすツボ
  フルハシ環境総合研究所 社長 舟橋康貴氏
2.整理整頓が生み出す経営資源
  スッキリラボ かたづけ士 小松易氏
3.2Sオフィスのビフォア・アフター~ダンボール150箱分を廃棄!
  国際環境ソリューションズ(株) 立野久美氏
4.やる気が大事!社員みんなでCO2削減
  (株)丸和印刷 社長 鳥原久資氏
の4件でした。


1番目の舟橋氏の話は、環境問題と環境経営に対する一般的な解説でしたが、中小企業が環境経営を進めるに当たって注意点を以下のように話されていました。
・環境経営はビジネスにとって有効な手段であるが、ストーリーが明確でないとお客さんに価値を与えられず成功しない。また、社員に対してなぜ環境に取り組むかを明確にすることが必要である。
・社員の自発的な活動でなければならない。やらせるのではなく、自ら気付くことが必要である。
・中小企業では、いろいろやっているが、やっていることをお客さんにキチンと伝えることが苦手のようである。キチンと伝えることが必要である。地域のネットワーク、外部の専門家の活用、他社との交流といったネットワークを築くことが必要である。


2番目の小松氏の話
 人は寝ている時間を除くと、1日の9割を「探す」ことに使っている。この時間を減らすことにより作業効率が上がる。
「かたづけ」とはABCである。
A・・・当たり前のことを
B・・・バカにせず
C・・・ちゃんとやる

D・・・これが出来る社員、出来る人を育成することである。
かたずけのポイントは「一度全部外に出して評価すること」である。
     外に出す
    /    \
   しまう   分ける
    \    /
      減らす
この習慣づけを行うことである。
では具体的にどのようにやったらよいかという説明があった。


3番目の立野久美氏の発表は、その具体的事例である。
 国際環境ソリューションズでは2006年より2S→3S→4S→5Sと段階的に5Sを導入してきたが、その過程でダンボール150箱分を廃棄し、スペースを空けてフロアを縮小した。その結果フロアリース料の削減と電気使用量が33%削減できた。
ここにきて、5Sと省エネのつながりが納得できた。事務所の5Sは、ここまでやらねばダメですね。
立野氏は5Sの定着と成功のポイントを次のように紹介されていた。
・組織のトップのバックアップがあったこと。
・取組開始前に2Sの実施目的や期待される効果を明確にし、社員に説明したこと
・ルールはシンプルで守りやすくしたこと。
 定期的に説明会やアンケートをとり、守れる内容かどうかを確認しながら進めた。
・やらされ感をもたせないこと。
 アンケートの意見・要望をできるだけ迅速に反映した。また、途中でワークセッションも開催した。
・ 共有資料の管理担当は輪番制とし、5S活動への全員参加の意識を持たせたこと。


4番目は社長自らの発表でした。
 丸和印刷は30人という小さな会社であるが2002年にISO14001を取得した。その後、活動の継続性に苦心してきた。8年経過してきて現在は、プリントーク、エコプリンと名づけた2つの外部に対する環境教育情報、CSRレポートの発信の3つを柱としている。また、「社員一人一人の参加が出来る活動」ということにこだわっている。

・エコモチ
 エコモチとは「エコ・モチベーション」の略で、フルハシ環境総合研究所が事務局をしている会員組織活動です。従業員が省エネなど環境に配慮した行動をとり、それを「エコモチ」Web サイトで申告すると、「ポイント」がもらえる。溜まったポイントをNPO団体に寄付し社会貢献をするしくみです。鳥原社長は「これはお勧めです」と推奨されていました。

・エコキャップ
 NPO法人エコキャップ推進協会が運営する活動で、ペットボトルのキャップを一定数集めて(ペットボトルはリサイクルして)、恵まれない子にポリオワクチンを送る。

・エコバッグ
 印刷業を生かしてエコバックをつくりお客様に配る。
これらはみんな社員の発案だそうです。

社長の言葉の中で印象に残ったこと
 「環境経営は企業のコストダウンにつながる。しかし、コストダウンを強調すると社員の参画意識が落ち、モラルが下がる。これに社会貢献を組み込むことによって社員一人ひとりのモチベーションが上がる」
ここが永続きのポイントということでしょう。

2010年02月08日

「エコアクション21全国交流大会in静岡」に参加して

1002rimg0056 2月6日(土)・7日(日)静岡コンベンションセンターで開催された「第4回エコアクション21全国交流大会」に参加しました。
主催者側の発表によると、当日の参加者はエコアクション21審査人、地域事務局、事業者合わせて約700名とのことでした。大会を盛り上げていただきました静岡県の関係者の方々、どうもありがとうございました。
 エコアクション21は、2004年11月に認証登録制度は発足し今年で5年目になる。認証登録件数も今年末には5,000件に達すると予測されている。発足当初は、環境パフォーマンスとしてCO2排出量、廃棄物、水を必須取組項目とする環境マネジメントシステム(EMS)として出発したが、5年も経つと先行する事業者では、お金をかけてやれる紙・ごみ・電気・水といった取組項目の改善はやりつくし、更に活動を継続してするためには制度の変更が必要な状況になってきていた。このような状況を踏まえて今年6月1日より新しいガイドライン2009版が発行になる。2009年版では環境パフォーマンスとして、本業(製品・サービス)の環境への取組、化学物質が必須となり、生物多様性についても推奨事項として追加になった他、要求条項の記述方法の見直しや追加があった。
この交流大会も、前回までとは少し違って「本業の取組を如何に支援したらよいか」という内容が多かったように感じました。
 認証登録件数5,000件と言っても、80万と言われる日本全体の中小企業全体に占める割合は0.6%に過ぎない。中央事務局の後藤参与が行っておられたが、地球温暖化防止や資源の枯渇などの喫緊の課題に対応するには日本の半数位の事業者に何らかの形でEMSに参画してもらう必要がある。エコアクション21としては、登録事業者が現在の20倍位まで増えないと政策的には実質効果がない。
 そのような意味から、今回の研修では「自治体との連携によるエコアクション21の普及」というプログラムが組み込まれたものと思います。静岡県の成功事例の紹介は良かったとは思いますが、地域により事情が異なり、地域ごとの特性に合わせなければ成功しないと思います。というのは私の地元石川県では、2008年より“いしかわ事業者版環境ISO”という制度が発足し、費用が安く(1万円)、取組が簡単(CO2排出量・廃棄物・水だけ、環境法規制は対象外)であることと、石川県知事を筆頭とする県当局の強力な推進により発足2年間で300件、今年度中には500件に達する見込みです。エコアクション21は影が薄く、逆にエコアクション21から“いしかわ事業者版環境ISO”に乗り換える事業者も散見される状況です。
しかし、いしかわ事業者版環境ISO”は、本業には踏み込んでいないので、数年して紙・ごみ・電気のようなすぐにやれる改善をやりつくすと行き詰まりをきたすことが予測されます。
一方、エコアクション21は、本業への取組みによる環境経営の推進による経営効率の向上という方法に舵を切り替えたことにより、そのような問題は回避されると予測されるが、こことが、これから取り組もうとする中小企業にとってより敷居がより高くなったと感じてはじめから諦める事業者が出てくる可能性がある。この点について研修では「審査人が適切の状況を判断して、状況に合った指導をしなさい」というニュアンスであったが、これはかなり高度なスキルであり、現場を見ていない判定委員会や中央事務局の理解度も考慮すると機能するとは思えない。
 これは個人的な提案ですが、いしかわ事業者版環境ISO・南信州いいむす21・板橋エコアクション・めぐろグリーンエコアクションプログラム・水俣エコショップ認定のような導入版と、エコアクション21:2009のような本格版をシリーズ化して、事業者が段階的に活動内容をレベルアップし、持続的な改善活動が進むようにしていただくことがよいと思います。
そのためには、中央事務局と自治体当局間の協業や、国のチャレンジ25の政策の中で取り上げていただくことを望むものです。

交流大会当日のスケジュール及び自分自身が気づいた概要を以下に紹介します。

■ 2月6日午後~7日午前

「行政との連携によるエコアクション21の推進」
 静岡県のEA21認証登録件数は2009年末で540件と全国でトップである。これは行政の率先垂範とグリーン化プログラム(グループごとの無料共同コンサル)等による支援が利いている。西原茂樹・牧之原市長、北村正平・藤枝市長、望月良和・伊豆の国市長を交えてパネル討論会が行われた。
 中でも西原市長は、「環境対策を進めれば、企業はコストダウンを図れるし、行政は無駄を削ることができる。『環境対策はもうかる』という意識の浸透が制度普及につながる」と力説さ、更に温室効果ガス25%削減するには国がEMS構築事業者に対する支援する政策が必要とも発言された。
さすが先進地域のですね。

「EA21ガイドライン改定2009年版」
 EA21中央事務局 森下事務局長より改定の背景と概要についての解説があった。詳細については4月~5月に開催される「審査人力量向上研修会」への参加が義務付けられており、その後でないと内容を解説することができない。

「審査人力量向上研修」
 審査のポイント、法規制、アドバイスの仕方などの講義や事業者へのアンケート結果の紹介がありました。

■ 2月7日午後

記念講演「環境経営の原点に立ち返って」 静岡大学 大橋教授
 学者であると同時に静岡県のEA21の判定委員の経験から、現在の取組まれているエコアクション21EMSの問題点とあるべき姿を解説していただいた。
幾つか解説していただいた中に「PDCAサイクル(デミングサイクル)とは、目標を設定し科学的な仮説を設定して、実施してみる。この結果から、原因を分析して、どこに改善が必要で、それをどのように取り組んでいくかを知り、次の計画に織り込むことである。これまでの経験では、データをとって達成したかどうか○×を付け、×の言い訳をしている事例が多いがこのようなことではない」とのご指摘がありました。
このご指摘は全く同感です。ISOの用語でいえば、これが「有効性の改善」と言うことでしょう。

記念講演「富士山の自然環境と生物多様性」 富士常葉大学 山田教授
 この講話は大変面白かった。富士山にかかる雲は樹海を創る。樹海には海や川にいる生物が上がってくる。中でも樹海の中で展開されるヒメ蛍の光景は神秘的らしい。
ヒメ蛍は2年間樹海の中で幼虫として暮らし、成虫となって夏に地上に夜中の11時頃から一斉に点滅する。明け方になって雄と雌の点滅が同期したときが恋の成立、子孫を残して2日間で死んでしまうそうです。これに比べると人間の老後とは一体何なのか考えさせられました。

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