豊かさに向かって、経済のデカップリング

2050pr
昨年3月のブログで「日本は温室効果ガスを70%削減できる」というテーマで「脱温暖化研究2050プロジェクト」の中間報告の内容を紹介しました。
70%削減の内容は、エネルギー源を石油起源以外のもの切り替えて行くことで約20%、需要量の削減で約50%となっている。
需要を減らすのは2種類ある。
一つは、技術的な進歩を実現し、資源・エネルギーの使用効率を高めること。言いかえると長寿命で修理の利く製品、燃費・消費電力などの低い製品を選択すること。
もう一つは、節約をすること。

この内容は、その後安部首相の”美しい星50”の提言や、福田首相の洞爺湖サミットに向けての施策にも盛り込まれているようである。
但し、ここで大事なことは、「皆さんに売上を落してください」と言っているのではありません。売上を維持し豊かな生活を実現しながら達成することです。

今年に入って、新たにISO14001の導入するための研修の機会が数回あったので、環境問題の基礎知識としてIPPCの温暖化の報告概要に続いて、以上のような話もさせていただきました。

聞かれた側の受けとり方は様々なようで、話の内容はよく理解していただけるが、ではどうしたらよいのか困惑される場合が見てとれる。

[ ある建設コンサル会社さんでやったときの話 ]
・具体的にどうしたらよいのか。我々の仕事の発注先は自治体で、殆んど先方で仕様が決まってしまう。値段も段々と下がっていく。やりようがない。

[ ある避雷器メーカーでやったときの話 ]
・自社は小さいメーカーなので、事務所や工場の省エネと言ってもその量はわずかである。ISO14001の目玉がこんなものであるとすると何となく空しい。こんなことをやっても自社の経営は良くならないのではないか?

この話を理解するには基本的に、発想をガラリと変えないと無理なところがある。
節約というのは、コストの低減になる。
しかし、確かに、現状では、資源・エネルギーの使用効率を高める製品の販売や購入というのは、必ずしも売上増大にならず、従来の観念からの観念で言う豊かな生活にはつながらない。

これまでの経済指標GNPとは、資源・エネルギーの使用量で評価されてきた。ここでは「GNPを下げて豊かな生活を確保しよう」と言っているのだから、全く正反対のことを言っている。

そこで、発想の転換がある。これまでのGNPを基にしたアメリカ式の経済学から転換をする。このことを、「デカップリング=資源・エネルギー消費量と経済活力の分離」という。このことによって、豊かな低炭素社会にたどりつく。
ドイツやイギリス、北欧諸国では既にこの方向に進んでいるが、日本やアメリカでは、まだその認識が低い。

下の図は、国連副学長安井至先生「市民のための環境学」のページからの転載です。
Decoupling

これまで我々は問題領域 1,2,3,4をいう過程を経て、これからの発展は物質・エネルギーという問題を克服しなければならない段階にきた。

これからの豊かさの尺度は個人の「幸福感」となる。
安井先生によると、デカップリングのための人類の欲求は
「社会貢献を行うことの満足感」
「他人に感謝されることの満足感」
「他人に自慢できることを持つ満足感」
「未知の他人と交流することの満足感」
そして
「次の世代に残す知識・情報を作りだすことの満足感」

これには、炭素税や、公共財産である炭素の使用権の買い取り制度(排出量取引制度)などを導入して、現在税金で補われていて製品価格に反映されていない環境破壊の費用を製品価格に織り込んで、製品を選択するときに正しい判断ができるようにする。
また、市民一人ひとりの考え方が、価格よりも、自己実現・健康・環境に負担をかかないことに価値観を置くように変わっていくことを支援するような施策が必要である。

最近のニュースを見ていると、どうも洞爺湖サミットを向かえて、流れが急速にその方向に動き出したように感じる。

ISO14001を導入する企業は、目先のことだけでなく、中長期的なこの流れをよく見極めて、その尺度を経営の中に取り入れていくことを考える。
キーワードは「人の考え方」である。そのためには「人財を育てること」⇒「ほめることが大切」という認識を共有することが必要と思いますね。

2008.03.15.09:05 | Permalink | Comments (0) | Track Backs (0) | e 地球温暖化最新情報

Track Back URL:

豊かさに向かって、経済のデカップリングへのコメント




ログイン情報を記憶しますか?

(スタイル用のHTMLタグが使えます)