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2008年03月 アーカイブ

2008年03月05日

エコアクション21はISO14001よりもキビシイか?

2月29日、3月1日に大阪でエコアクション21力量向上研修会があり、参加しました。
その内容は省略しますが、今年中にEA21ガイドライが変わるようです。
エコアクション21は環境省が推進している関係からか、我国の環境政策と密接につながり複雑になってきているようです。
一例ですが、国内でも数年後に中堅企業以上に温暖化ガスの排出枠が設定される方向で準備が進められている。
(現在自主参加型の国内排出量取引制度をテスト中で、この結果を踏まえて2013年度より排出量取引制度が施行されるらしい)
中堅企業が自社内で改善できない分は、中小企業を支援してもその分を排出削減に認める。また、余剰或いは不足した排出量の売買も行われる。この排出量取引において中小企業が排出削減をしたかどうかの検証の手段として、EA21を活用しようとしているようです。

また、運用面では、ISO14001よりも厳しいところがある。

ISO14001は、環境側面の特定という点がかなり面倒です。反対にエコアクション21はこの点が簡素化されていますが、適用範囲の設定、環境パフォーマンスの選択、情報公開については柔軟性がなくISO14001の基準よりも厳しいようです。

以下、比較です。

■ 適用範囲の設定
◆ISO14001(IAF RE300 認証登録の範囲) 
○当該EMSでカバーしている事業活動の経営層が:
・EMSに係わるすべての環境側面及びそれに伴う影響に対する責任を実証できること。
・環境方針及び目的・目標・実施計画の設定などの面で,実行・維持の決定権限があること。
・環境管理及び改善に適切な財政的及び人的資源を配分する権限をもつこと。
○登録の対象となる活動を明確に特定すること。

◆エコアクション21(認証登録手続き規定)
○認証登録に当たっては、極力、全社、全組織、全ての活動を対象とする
(内容別の詳細基準あり)


■ 環境パフォーマンス(目的・目標)の扱い

 エコアクション21では、業種別にマニュアルが作成され、すべきことが明確に規定されている。
以下は建設業の例です。

ISO14001の環境側面特定の要求事項 建設業における主な該当事項
---------------------------------------------------------------------------
ISO14001 4.3.1 
・組織が管理できる環境側面(活動中心)――→  A.エコオフィス活動
                                 (紙・ごみ・電気・水)
                        ﹂――→  B.工事の効率向上
                              (省エネ・副資材の歩留向上)                        
・組織が影響を及ぼすことができる環境側面――→ C.環境配慮型製品の設計
 (製品・サービス中心※)                  新技術の開発
・新規の開発、新規の活動、製品及び           ↑
  サービスの環境側面            ――――

ISO14001 4.4.6c                        ※
・組織が用いる物品及びサービスの著しい環境――→ D.グリーン購買
側面 → 請負者に要求事項を伝達すること。  ―――
                                 ↓
ISO14001 4.3.2                        ※
・法的要求事項を特定し環境側面に適用すること。→ E.工事に関わる環境配慮
                                   (騒音・建設副産物の処理
                                       ・景観・省エネ等)
--------------------------------------------------------------------------  
これらの環境側面の仕組みへの展開
--------------------------------------------------------------------------
ISO14001の要求事項
・継続的に改善するものと、管理するものに分ける。
 (その決定に際して考慮すべき事項がISO14001 4.3.3に定められている)
・改善するものは目的(中期目標)、目標(年度目標)に織り込む。
・中期目標は、方向提示型でも可とするが、年度目標は数値化すること。
・管理するものは手順に織り込む。
-------------------------------------------------------------------------
エコアクション21(建設業マニュアル)の要求事項
・A~Eについて、該当するものを中期及び年度の数値化目標に設定し継続的に改善すること。但し、C、Dにつての目標は、最初は方向提示型でも可とする。
・その結果を環境活動レポートで公表すること。
-------------------------------------------------------------------------

以上を見ていただくと分かると思いますが、エコアクション21の方が柔軟性がなく、キッチリやらないと認証しないという要求が現われていますね。

そんな関係からか、ISO14001認証取得された事業所を見ると、そのレベルは千差万別ですがエコアクション21は、どれも同じようなレベルのように感じます。

2008年03月15日

豊かさに向かって、経済のデカップリング

2050pr
昨年3月のブログで「日本は温室効果ガスを70%削減できる」というテーマで「脱温暖化研究2050プロジェクト」の中間報告の内容を紹介しました。
70%削減の内容は、エネルギー源を石油起源以外のもの切り替えて行くことで約20%、需要量の削減で約50%となっている。
需要を減らすのは2種類ある。
一つは、技術的な進歩を実現し、資源・エネルギーの使用効率を高めること。言いかえると長寿命で修理の利く製品、燃費・消費電力などの低い製品を選択すること。
もう一つは、節約をすること。

この内容は、その後安部首相の”美しい星50”の提言や、福田首相の洞爺湖サミットに向けての施策にも盛り込まれているようである。
但し、ここで大事なことは、「皆さんに売上を落してください」と言っているのではありません。売上を維持し豊かな生活を実現しながら達成することです。

今年に入って、新たにISO14001の導入するための研修の機会が数回あったので、環境問題の基礎知識としてIPPCの温暖化の報告概要に続いて、以上のような話もさせていただきました。

聞かれた側の受けとり方は様々なようで、話の内容はよく理解していただけるが、ではどうしたらよいのか困惑される場合が見てとれる。

[ ある建設コンサル会社さんでやったときの話 ]
・具体的にどうしたらよいのか。我々の仕事の発注先は自治体で、殆んど先方で仕様が決まってしまう。値段も段々と下がっていく。やりようがない。

[ ある避雷器メーカーでやったときの話 ]
・自社は小さいメーカーなので、事務所や工場の省エネと言ってもその量はわずかである。ISO14001の目玉がこんなものであるとすると何となく空しい。こんなことをやっても自社の経営は良くならないのではないか?

この話を理解するには基本的に、発想をガラリと変えないと無理なところがある。
節約というのは、コストの低減になる。
しかし、確かに、現状では、資源・エネルギーの使用効率を高める製品の販売や購入というのは、必ずしも売上増大にならず、従来の観念からの観念で言う豊かな生活にはつながらない。

これまでの経済指標GNPとは、資源・エネルギーの使用量で評価されてきた。ここでは「GNPを下げて豊かな生活を確保しよう」と言っているのだから、全く正反対のことを言っている。

そこで、発想の転換がある。これまでのGNPを基にしたアメリカ式の経済学から転換をする。このことを、「デカップリング=資源・エネルギー消費量と経済活力の分離」という。このことによって、豊かな低炭素社会にたどりつく。
ドイツやイギリス、北欧諸国では既にこの方向に進んでいるが、日本やアメリカでは、まだその認識が低い。

下の図は、国連副学長安井至先生「市民のための環境学」のページからの転載です。
Decoupling

これまで我々は問題領域 1,2,3,4をいう過程を経て、これからの発展は物質・エネルギーという問題を克服しなければならない段階にきた。

これからの豊かさの尺度は個人の「幸福感」となる。
安井先生によると、デカップリングのための人類の欲求は
「社会貢献を行うことの満足感」
「他人に感謝されることの満足感」
「他人に自慢できることを持つ満足感」
「未知の他人と交流することの満足感」
そして
「次の世代に残す知識・情報を作りだすことの満足感」

これには、炭素税や、公共財産である炭素の使用権の買い取り制度(排出量取引制度)などを導入して、現在税金で補われていて製品価格に反映されていない環境破壊の費用を製品価格に織り込んで、製品を選択するときに正しい判断ができるようにする。
また、市民一人ひとりの考え方が、価格よりも、自己実現・健康・環境に負担をかかないことに価値観を置くように変わっていくことを支援するような施策が必要である。

最近のニュースを見ていると、どうも洞爺湖サミットを向かえて、流れが急速にその方向に動き出したように感じる。

ISO14001を導入する企業は、目先のことだけでなく、中長期的なこの流れをよく見極めて、その尺度を経営の中に取り入れていくことを考える。
キーワードは「人の考え方」である。そのためには「人財を育てること」⇒「ほめることが大切」という認識を共有することが必要と思いますね。

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