EMSでの塩化ビニールの取り扱い

5年ほど前は、「塩化ビニールは燃やすとダイキシンが発生する」「塩ビ製造過程で添加するフタル酸エステルが環境ホルモン作用を起す疑いがある」ということで環境に悪い材料とされてきました。
一方、塩化ビニールは安くて耐久性があり省エネ性能もよいという相反するメリットがあります。

私がコンサルで訪問した車イス製造会社でもシートに塩ビを使っていて他の材料に切り替えようとするとコストが合わない。
フイルムヒーターを開発・生産している会社でも同じ問題で苦慮しておられた。
また、建設会社を訪れると器材倉庫に保管されている水道管などは殆ど塩ビである。

ところが、ここにきて風向きが変わったようです。

環境省が温暖化対策の一環として、東京・霞ヶ関の合同庁舎5号館に、アルミサッシではなく断熱性能のよい樹脂サッシ(塩ビ)を導入した(日経エコロジー4月号)。

その背景には、2000年にダイオキシン対策特別措置法が施行され、焼却炉の対策が進みダイキシンの排出量は焼却技術の進歩でかなり防げるようになったこと。
また、環境ホルモンに関する認識が変わってきたことにあるようです。

塩化ビニールから染み出すフタル酸エステルや、焼却後に発生するダイオキシンは分解されにくく、生物濃縮により脂肪に蓄積され代謝などによる排出がされにくいことから環境ホルモンとして作用し、子どもができなくなるのではないか、ということに大きな関心が寄せられてきた。

しかし、2004年9月環境省が調査結果を発表し、 「28物質でラットを用いた試験を実施し、いづれの物質でもヒト推定暴露量を考慮した用量では、明らかな内分泌かく乱作用は認められない」と結論付けた。

また、閥値以下の低量でも影響があるという報告に対しては、動物実験をしていて時々見られる劣勢遺伝による自然発生的な異常を環境ホルモンによると誤認したのではないか」という見解が出ている(日経BP社エコプロダクト2007、58ページ)。
これらの結果に対して、専門家の見解が分かれているが、以前のような大変な状況という認識ではなくなっているようです。

一方、ダイオキシンの毒性としては、急性致死毒性と慢性毒性がある。
慢性毒性としては催奇性の他、発がん性・肝毒性・免疫毒性・生殖機能の異常などがあげられる。

ダイキシンの慢性毒性については、ベトナム戦争時の枯葉剤に副産物として含まれることになり、強い催奇性で注目されることとなった。
ダイオキシンの急性毒性については、2004年12月、ウクライナ共和国の大統領候補であったユシチェンコ氏がダイオキシンを食事に盛られて倒れ、顔面に青黒い発疹ができて人相がすっかり変わってしまった、という事件がありました。
ユシチェンコ氏はその後無事回復して大統領の座に就きましたが、その後の調査で彼は2mg程度のダイオキシンを食べさせられたと見積もられています。これはニュースで一時期騒がれた「高濃度ダイオキシン汚染キャベツ」を、一度に200万個程度食べた量に相当します。
これだけのダイオキシンを一時に摂っても生命に別状がなかったわけですから、ダイキシンの急性毒性はヒトに関しては取るに足りないのではないか、と考えられるようになったことです。

日経エコロジー4月号(115ページ)によると、以上のようなことが関係してか、最近、新規住宅への樹脂サッシの採用が増えているとのことです。
またリコー、松下、ソニーでも、従来の環境方針を塩ビ「全廃(使用禁止物質)」から「使用管理物質」に変更しているとのことです。

2007.03.30.23:41 | Permalink | Comments (0) | Track Backs (0) | d ゴミとリサイクル化

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