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2006年07月 アーカイブ

2006年07月09日

中小企業向けEMS ISO14005

中小企業がISO14001にとり組むのは大変だ。
そこで、日本ではエコアクション21やKESが生まれてきた。

ISO14001が中小企業に広がらなかったのは海外でも同じで、英国では中小企業向けのEMS規格BS8555が制定された。

ところが、ここへきてISOがこの規格を取り上げ、中小企業が段階的にEMSに取り組むための国際規格ISO 14005(環境マネジメントシステム 段階的適用のガイドライン《仮題》)が作成されつつある。

この規格は正規のISO 14001に至るまでを5段階に分け、順次ステップアップしながらEMSを構築していくための指針を示したもので、いまの見通しでは2009年に発行される予定です。
QMS(品質マネジメントシステム)等との整合・統合や環境パフォーマンス(できばえ)の評価技法について実施段階でのアドバイスがあり、各ステップごとに承認(認証ではない)もできる見込みになっている。

 ⇒ 環境新聞ISO14005の紹介記事

しかし、私見ですが、これが中小企業にどこまで広がるか疑問に思う。

経営的な観点から見ると、企業の1人当たり付加価値(粗利)は企業規模とは余り関係なくほぼ同じである。
業種にもよるが、大企業で月100万円(年1200万円)、小企業で月70万円(年840万円)といったところでしょうか。

この中から、労務福利や減価償却、改善などの費用が出ていく。
仮に年度粗利の0.1%をISO環境マネジメントに使ったとすると
・社員数1000名の企業では、1200万円
・社員数10名の会社では、8万円
と言うことになる。

ISO14001に関する費用は、大企業であっても、小企業であってもさほど違わない。
費用的な面で考えると、手段をどのようにいじくろうとも、構築・維持費用を劇的に安くできるようにしなければ、小企業には広がらないように思います。
エコアクション21は、この点に目をつけ、費用をISO14001の1/5~1/10にしたのは卓見だと思います。しかし、これまで自分が審査人として接してきた感触ではこれでもまだ高いと思われているようだ。
と言うよりは、EMSが経営システムとして本業の利益に貢献するとは受け取られていない点にも問題があるように思います。つまり、EA21は活動の環境負荷の改善が中心で、本業の中で環境に貢献しながら事業効率を上げていくという点が(推奨事項ではあるが)、要求事項になっていないことに問題がある。

私の見方を裏付ける例として、小企業のISO14001をうまく行なっていることで有名な山梨県の向山塗料のページを見てください。

----------<向山塗料の自己宣言のページより引用>-----------------------
地球環境問題を自分のこととして真摯に取り組む会社が多くのお金を払わなければ継続できない現在の仕組みは少々変だと考えております。私どものような零細会社が取得(2~300万円?)、継続でも(毎年70万円くらい)ではほとんどの会社は尻込みして折角素晴らしい考えのISOにも参加しようとの気すら起きないでしょう。大きな参入障壁といえます。この宣言によりISOの国際認証機関からは離れますが、自社で募集した環境オンブズマンとともに、ISOの哲学は引継ぎこれまで以上にパフォーマンスを向上させ、環境に関心のある企業は自己適合宣言をして環境に対する実を上げれることを証明すべく、取組みを続けていきます。
----------<引用終わり>-----------------------------------------------
全くその通りだと思います。
しかし、自己宣言もそれ程簡単ではないですね。
向山塗料さんは、そのために地域で関心を持った人やEMS審査資格を持った人によるオンブズマン制度を作られています(詳細は向山塗料のページ参照)。

2006年07月26日

地球シュミレータ

地球温暖化について、先のブログ”西暦2028年”で紹介したが、平成16年9月に日本が世界に誇るスーパーコンピュータでシュミレーションが行なわれていたんですね。

「地球シミュレータ」によると、世界中で二酸化炭素をかなりの努力で削減したとしても、今後、日本の夏が涼しくなることはないらしい。今は最高気温が30度を超える真夏日は7月中旬から8月末までの時期に限られるが、西暦2100年には6月中旬から9月末までの100日間と、かなり長い期間で出現するようになるらしい。

 その最高気温も、2020年ころには毎年35度を超えるようになり、2070年ころには40度を超える年が出現するようになる。日本の本州にも熱波が到来するようになる。

以下は、東京大学気候システムセンターの地球シュミレータ情報 からの引用です。

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図1 計算された年平均地表気温上昇量の地理分布。シナリオ「A1B」の2071~2100年の平均気温から、1971~2000年の平均気温を引いたもの。

また、日本の夏の日平均気温は1971~2000年の平均に比較してシナリオB1で3.0℃、シナリオA1Bで4.2℃上昇、同様に日本の日最高気温はシナリオB1で3.1℃、シナリオA1Bで4.4℃上昇となった。日本の夏の降雨量は温暖化により平均的に増加する。

これは、熱帯太平洋の昇温と関係して日本の南側が高気圧偏差となり、これが日本付近に低気圧偏差をもたらすと同時に暖かく湿った南西風をもたらすこと、および、大陸の昇温と関係して日本の北側が上空で高気圧偏差となり、これが梅雨前線の北上を妨げることによると見られる(図2)。
また、真夏日の日数は平均的に増加するという結果となった。これは、平均的な気温が上昇することによるもので、気温の年々の振れ幅には大きな変化は無いと見られる。
さらに、豪雨の頻度も平均的に増加するという結果となった。これは、平均的な降雨量が増加することに加えて、大気中の水蒸気量が増加することにより、一雨あたりの降雨量が平均的に増加することによると見られる。

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図2 計算された、将来の日本周辺の夏季(6・7・8月)における降水量(カラー)、500hPa高度(等値線)、850hPa風(矢印)変化の分布。シナリオ「A1B」の2071~2100年の平均から、1971~2000年の平均を引いたもの。500hPa高度は対流圏を代表する上空の気圧変化を表す。Hは周囲と相対的に高気圧性、Lは周囲と相対的に低気圧性の変化。850hPa風は、1500m程度の高さの対流圏下層の流れを表す。

2006年07月31日

「環境にやさしい」をどう考えるか

7月29日、30日、2日間に渡って山形メトロポリタンホテルで第1回エコアクション21全国大会が開催され、私も参加しました。参加者はEA21審査人、地域事務機事務局、EA21を運用している企業の方など約400名。

この中で、基調講演で行なわれた国連大学副学長の安井教授の「『環境にやさしい』をどう考え、どう判断するか」という基調講演が、今後環境保全活動を行って行く上で参考になる点が多々あるように感じました。

また、安井先生自身、皆さんからもこの状況を他の人に話してほしいとの話がありましたので、以下に私が聞き取った講演の骨子を掲載します。
なお、この講演内容の大部分は、安井先生のホームページ「市民のための環境学ガイド」講演資料「企業戦略とCSR」の中に入っています。

 ・・・・・・・・・・・ 「環境にやさしい」をどう考えるか ・・・・・・・・・・・・・

環境問題は時とともにどんどん変わっていく。常に新しい情報を取り入れていない一人よがりの活動になってしまう。
1970年代が環境問題の主なテーマは公害問題であったが、これは現在殆ど解決され問題になってない。
2000年ころには、ダイオキシン、環境ホルモン、オゾン層破壊であったが、これも殆ど手が打たれ解決に向かっている。ただしオゾン層破壊については対策効果が出るのに期間がかかるので、まだ20~30年は表面的には結果があらわれないであろう。
現在発生している問題は地球温暖化であり、その次に並行して発生する問題は資源・エネルギーの消費である。
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 図1 日本における環境問題の推移(安井先生のHPより)

地球温暖化は、現在、産業革命前に比べて0.6℃上昇しているが、従来は2030年までに改善により温暖化ガスの発生を25%削減、2100年までには70%削減するという考え方が大勢を占めていた。
しかし、大型コンピュータによるシュミレーション等の結果、2030年までに50%削減しないと、温度上昇が2℃を越え地球規模な海流の変化など気候変動により種の絶滅、人間の生存環境も危機的な状況になるという話しが出てきた。
これは時間的にかなり厳しい状況である。
スウェーデンのように2020年までに石油エネルギーの使用の全廃を打ち出すなど、欧州では、まじめに温室効果ガスを半減するという政策を採っている国があるが、現在温暖化ガスを出している国が全てそのような政策を取るということは難しい。
しかし、一方において1980年に石油の採掘量よりは発見量が少なくなってきており、ピークオイル(生産量と頂点)は2010年頃と予測され、原油価格が値上がりして、この点から政策転換を図らねばならない状況になりつつある。
このような状況になったとき、最大消費国であるアメリカは、エタノール燃料に変えていく可能性が強い。
このときに食料問題が発生してくる。
世界で食料を輸出している国はアメリカだけである。そのアメリカが、農地を穀物からでるエタノール燃料の生産に転換した場合、穀物の輸出が止まり、最悪の場合、貧しい国で餓死者が出ることもありうる。
食糧というのは水資源の問題でもある。穀物1トンを作るのに水が1000トン必要である。
エタノール燃料の開発とは、再生不可能な資源である石油資源から、同じく有限資源である水の消費に付け替えただけである。

このような背景から、2000年以降は、持続可能(サスティナビリティ)な社会を作るという問題が大きなテーマとなってきている。
特に、重要な概念が
 グローバルサスティナビリティ
 ローカルサスティナビリティ
である。
開発途上国では、貧困の撲滅、生活の改善ができなければ、ローカルサスティナビリティもグローバルサスティナビリティも達成されない。
また、日本は食糧(水、元素)もエネルギーも外部に依存しており、グローバルサスティナビリティが実現されない限り存続が危ない。

先のヨハネスブルクサミットWSSDで指摘されていることでもあるが、
先進国が主導し、全ての国で「持続可能でない生産・消費形態を変更する」ことである。

日本においては、エネルギー消費、CO2排出量を削減することである。
この場合、エネルギー・資源の使用を削減して(経済的な)豊かさを落とすのではなく、エネルギーの使用を削減しながら豊かさを向上させていかねばならない。

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 図2 日本のこれからの環境のトレンド(安井先生のHPより)

日本がやらねばならないことは、エネルギー・資源を消費しない技術を開発し世界に貢献していくことであり、もうひとつは経済のサービス化である。
これには次のプレミアムを考慮するとよい。
 ブランドプレミアム
  ・同じような製品でもメーカーが違いにより価値が高い
 超小型プレミアム
  ・超小型にすることで価値が高い
 使いここちプレミアム・手作りプレミアム
  ・使い心地に気を配った手作り製品で価値が高い
 超寿命プレミアム
  ・寿命が長く、修理が利くため価値が高い
 信頼プレミアム・安全プレミアム
  ・信頼できる製品作り・安心できる製品作り
 地域プレミアム
  ・地域特性を活かした製品作り
 エコプレミアム
  ・製品の環境負荷が低いために価値が高い

製品のエコプレミアム化の例としては、太陽電池、プリウス(ハイブリッド車)、電球型蛍光灯などがある。

人類は、地球環境の変化に対応して革命を起して生存をした。

第一の革命は、1万3千年前のヤンガードリアス寒冷期、この期において農耕文明による革命を行い生存した。

第二の革命は、1700年頃の小氷期、この期に人類はエネルギー転換と産業革命を行なった。

今は、第三の革命に向かう時期である。
第三の革命に向かうための人類の欲求は、
「社会貢献を行うことによる満足感」
「他人に感謝されることの満足感」
「他人に自慢できることを持つ満足感」
「未知の他人と交流する満足感」

そして、「次の世代に残す知識・情報を作り出す満足感」

まだ有効活用されていない人間のこれらの本能を刺激することにより、恐らく「ほめられることによる意識の変革」から新しい価値観が形成され、第三の革命に繋がることができる。

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