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2006年04月 アーカイブ

2006年04月09日

動物園の環境マネジマントシステム

石川県は環境省のエコアクション21が全国より先行している。
理由は平成12年頃より県環境政策課と金沢市が普及活動に勤めてきたことによる。旧環境活動評価プログラムが2005年度にEA21認証制度に変更になったとき、旧環境活動評価プログラムから特例措置として書類審査だけで移行認証した事業所が76あった。この数は全国一である。
4~6月にかけて、これらの事業所様の中間審査を各審査人が分担して実施することになった。
私が担当する事業所様はその中15~17事業所である。 建設業・造園業・印刷業の方が殆どで、これらの事業所には、私自身コンサル等で経験があるので審査をすることには、それ程抵抗を感じていない。
ところが、その中で いしかわ動物園 からの依頼があった。
(本来、顧客名は公開しないのですが、公共機関であり情報開示・透明化の一旦と解釈し名前を書かせていただきましたのでご理解下さい)

これには、一寸びっくり。
私は動物園の専門家ではない、それにいしかわ動物園は平成14年度の環境活動レポート部門の環境コミュニケーション大賞を受賞されている。
どうしてだろか、「どの審査人に頼んでも大差ない、それなら地元の審査人に頼もう」と言うことになり私のところにきたのではないかと勝ってに解釈した。

昨年のいしかわ動物園の環境活動レポートを読むと、活動に伴う環境負荷の管理改善が1/3程度で残りは環境教育のことで占められている。

活動に伴う環境負荷の管理改善については一般の事業所様と変わらないので審査に不安はないが、動物園の環境教育とはどうあるべきなのかが良くわからない。

そこで、市民ZOOネットワークの「いま動物園がおもしろい」と、川端裕人筆「動物園にできること」を購入し読んでみた。
「動物園にできること」は数多くのアメリカの動物園のルポに、最近の日本の動物園の動向を追加して中々におもしろい本でした。

その中から考えられること動物園の目的は4つある。
1.レクレーション
2.環境教育
3.自然保護(種の保存)
4.研究    です。

従来の動物園の目的はレクレーション中心でしたが、最近の動物園は環境教育に力を入れている。
もう一つの視点は、動物を捕獲して動物園で飼育することが果たした動物のためによいのかという問題です。
その観点から、アメリカの大動物園は殆どがランドスケープイマージョン展示(その動物の生息地に近い状態を再現した生態展示)に変わっている。
日本では、最近天王寺動物園や犬山動物園がその展示を模しているが、アメリカの専門家から見ると、その域に達していないと言う評価らしい。

もう一つは、エンリッチメントである。
動物園での飼育環境は、動物たちが長年かけて適応してきた本来の生息地の環境と比較すると、どうしても、狭く、単純で、変化が少ない。そのため、ストレスで異常行動や胃潰瘍になるものが耐えない。 こうした飼育環境に道具や工夫により刺激を与えて正常な状態にしようというものです。アメリカでは20年前くらいから進められてきたが、日本でも2002年度日本ZOOネットワークがエンリッチメント大賞を設けて普及に努めている。

最近の流れとして日本で有名なのはテレビ等でご存知、旭川の「旭山動物園」の行動展示である。
旭山動物園は、従来の「集めた動物を飼育してみせる」という発想をくつがえして「自分の飼育している動物のすごさを見せたい、伝えたい」と言う展示の仕方に変えた。
それにエンリッチメントを加えて見所のある動物園に変わっているらしい(らしいと言うのは、自分はまだ行ったことがないので)。
試しに日本エンリッチ大賞を受賞した動物園を調べてみると旭山動物園が30%を占めている。

では環境教育とは何をするのか。入園者は動物園に来て「生態系の重要さ」「絶滅危惧種の問題」を理解し帰っていく。先進動物園では、そのために活発なイベントやワークショップが開催されるというのが一般的らしい。

ところが、アメリカでは最近「エコ・フォビア」と言う考え方が進んでいる。
エコ・フォビア(生態系嫌悪症)とは、
例えば、子どもの頃に性的な虐待を受けた子どもは大人になってもセックスが好きになるわけではなくて、逆に性に拘わる様々なことに恐怖を持つようになる。 もしも、動物について、或いは生態系について、怖い話を聞かされ続けた子どもはそのことを咀嚼できず、逆に目を背けてしまったりする。特に熱帯雨林の破壊みたいな子どもたちにはどうしようもないことを教えられるとの傾向が強い。小さな子ども達は自分たちにはどうしようもないことを教えられて無力感に苛まれているうちに環境問題を無意識のうちに無視し始める。そのことをエコ・フォビアという。
動物園では「小さな子どもにその動物が絶滅の危機に瀕していると言うことは伝えなくてよい」
「ユキヒョウが絶滅するかも知れない」と言う代わりに「美しい動物でしょう」と言ってあげた方がよい。
小さな子どもには、そんな教育をするよりも自然に接する配慮をした方はよい、ということらしい。

そこまで、にわか仕込みの基礎知識を仕込んで、審査以前の問題として、とりあえず入園者としていしかわ動物園 を訪れてみた。
このときの訪問記は私のもう一つブログ がまがえるのつぶやき「いしかわ動物園」 で紹介します。

2006年04月17日

事業系一般廃棄物の判断基準

このところ造園業の方とEA21の審査をさせてもらっているが、廃棄物の分類についての話が時々かみ合わないことがある。
一般に、造園業と方の半数位は、造園工事だけでなく土木工事もやっている。
この場合、汚泥、がれき類、金属くず、廃プラスチックは産業廃棄物、木くずは建築工事から出るものは産業廃棄物、造園業から出るものは事業系一般廃棄物と言うことになります。

このように、同じ廃棄物であっても、どこから発生するかによって事業系一般廃棄物になったり産業廃棄物になったりする。

以下にその分類方法を紹介しておきます。

業種に関係なく全て産業廃棄物となるもの
 燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック、ゴム屑、金属屑、ガラス屑、鉱さい、がれき類、ばいじん

発生する箇所によって産業廃棄物になったり、事業系一般廃棄物になったりするもの
 以下は産業廃棄物となる場合です。

紙くず:
 建築物に係わるもので新築、改築又は除去により生じたもの、パルプ製造業、製糸業、紙加工品製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業から生ずる紙くず

木くず:
 建築物に係わるもので新築、改築又は除去により生じたもの、木材又は木製品製造業、パルプ製造業、輸入木材卸売業から生ずる木材片、おがくず、パーク類

繊維くず:
 建築物に係わるもので新築、改築又は除去により生じたもの、衣服その他繊維製品製造業以外の繊維工業から生ずる木綿くず、羊毛くず等の天然繊維くず

動物性残さ:
 食料品、医療品、香料製造業から生ずるあめかす、のりかす、醸造かす、発酵かす、魚及び獣のあら等の固形物の不要物

動物系固形不要物:
 と畜場において処分した獣蓄、食鳥処理場において処理した食鳥

動物のふん尿:
 畜産農場から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとり等のふん尿

動物の死体:
 畜産農場から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとり等の死体

<5/6追記>
 事業系一般廃棄物に関して日経エコロジー4月号におもしろい記事が載っていました。
木製パレットは事業系一般廃棄物ですが、これが市町村から引き取りを拒否されることがある。
そうすると、事業者は産業廃棄物処理業者に処理を委託することになるが、この場合、処理できる産業廃棄物処理業者は産業廃棄物処理と一般廃棄物処理の両方の許可を持っていなければならない。次に一般廃棄物収集運搬業者と連携し、区域外処理について市長村から同意を得なくてはならない。
このような面倒なことをする産廃業者はいないため、木製パレットの行き場がなくなってしまう。
 このような経過から廃棄物処理法のこの条項は、また見直しがされるだろう、と予測されています。

2006年04月21日

造園業の環境マネジメントシステム

今週はエコアクション21で1週間の間に3つの事業所様の現地審査をさせていただきました。
仕事としてかなりきつくて、ブログはしばらくお預けとなってしまいました。(-.-)

何のご縁か分かりませんが、比率として造園業の方の審査が多かったようです。
そこで感じたことですが、造園業の環境マネジメントシステムとは何ですかという疑問です。

エコアクション21では、電気・燃料使用量、廃棄物排出量、水の使用量のデータを把握し環境負荷に換算する、そこからの環境負荷を考慮して改善計画を策定することが必須となっている。
そのために、事業者の方(特に担当者の方)は、このデータの把握と環境目標・活動計画を作ることに殆どの精力を費やしている。

結果的に出来上がったしくみは、何となく重箱の隅をつついているような感じになってしまっている。

先の動物園のEMSでも述べたが、直接的な環境負荷の改善も大切ですが本業を通した環境改善がもっと大切なように感じます。

造園と言う仕事は緑を増やし景観を良くする、また炭酸ガスを吸収する、といったように、仕事そのものが環境保全です。
従って、よい造園工事をする、造園の仕事を増やしていくと言うことが造園事業者様の売上げを伸ばすと同時に環境保全へ貢献して行くことになります。
環境経営システムとは本来そういうもので、燃料・電気・ゴミを減らすと言う活動は、その中の一部分でしかないと思います。
では、どうやってよい工事、造園の仕事を増やしていくかというと、お客さまに喜ばれるよい仕事をすること、よい造園とは何かを地域に知らせること(環境コミュニケーション)が必要で、そのためには造園についての広い知識と技能を上げていくことが必要だと思います。
そこのところをもっとシステムに取り込んでいただくのがよいのではないでしょうか。

例えば、私が勝手に考えた一つ例ですが
 (私は専門家ではないので間違っていたらお許し下さい)
 
①自然の植生にあった造園作りの研究
 以前NHKの造園教室で横浜国大の宮脇先生が「土地にあった自然の植生にあった木を植えれば台風がこようが、地震がこようがびくともしない。農薬もいらない。そのためには、近くの鎮守の森の植生を良く見ることだ」
と言っておられました。
 
②ビオトープ作りの研究
 保育園児、小学生の環境意識を高める庭造りをする。そのためにはどんな方法があり、どのように造園すればよいか。

③都市のヒートアイランド現象防止技術の研究
 最近は、壁面緑化や屋上緑化の造園技術が開発されているようですが、これらの自社技術を開発する。
 
④農薬を使わず虫をとり除く方法(例えば捕殺)の研究

こういった具体的なテーマを決めて、その知識・技能の習得を環境目標に追加していただくことがよいのではないでしょうか。

Mori_1
 宮脇先生のエッセー「森はいのち」 よーそろ2006年夏号より (オンクリックで拡大)

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